アメリカの人文系大学院への出願に関するブログシリーズ: (2) 教授への事前コンタクト(博士課程編)
皆様いかがお過ごしでしょうか?6月下旬のフロリダは、いつも通り暑いです(笑)。さて、前回に本ブログを更新してから一ヶ月以上も経過したのですが、それは別にそこそこ忙しかったというだけではありません。このシリーズでは出願のテクニック的なことを書いているのですが、それ以前のアメリカへの留学そのものに関する構造的な問題があり、その問題を前にして些細なことを書いても意味があるのか?という感覚があったからです。少しづつ状況は改善されてはいるようなので、今後も書くつもりでいるのですが、何とかはっきりして欲しいと皆様と同じくらい思っています。
今回は博士課程へ出願する以前の教授へのコンタクトに関して述べるつもりですが、正直想定する読者の皆さんに対してそれほど有益であるとは思いません。というのも、私は修士課程からセントルイス・ワシントン大学へ来ており、日本の修士課程からアメリカの博士課程に出願する過程を経ていないからです。他の出願項目については、まだ言えることはあるとは思いますが、この項目については日本の修士課程における状況と関連されると想像され、自分の考え方はこういう風に見えているのだな、程度にしておいてください。そこで、自分の経験を述べた後、日本の修士課程から申請することを想像しつつ自分の考えを述べたいと思います。
私は修士1年目(計2年)が終わり夏季休暇の際に博士課程に申請することを真剣に考え始めました。その際、今までで読んだことがある本の先生がどこで教えていることを調べました。具体的には指導教授の授業や関心に影響を受けて、近現代日本史、特に日本帝国史に関する先生がどこの大学で教えているなどを調べました。また、秋学期には指導教授と相談するなどして、どの博士課程のどの先生の元で学びたいか、その人が働いている学科の規模や生活費補助などを含めた経済的問題など、総合的に考慮しました。例えば、大学の名前や研究の質やメインとなる指導教授のことだけではなく、二人目・三人目となるような人(自分の場合で言えば、自分に合いそうな中国史・東アジア史の先生がいるか)がいるかなどです。博士課程の出願は12月に集中するので、11月にはお目当ての先生にメールを書きました。文面は、簡潔に自分の言葉で(このご時世、AIの補助もありだとは思いますが)、どこの修士課程にいて、どの先生とどんなコースワークと修士論文を書く予定かを述べます。そして、対象となる先生の研究と自分の研究の適合性や発展性などを述べた上で、出願の際に留意して欲しいことを述べた後、感謝の言葉で締めます。具体的な数は忘れましたが、3−4割程度の先生からは返事がもらえたような気がします。今でも覚えているのは某先生からものすごい冷淡な返事のメールが返ってきたのもいい思い出です(笑)。シカゴ大学の自分の指導教授であった人からは返事が来て、その後セントルイスからシカゴまで車で友達と行き、その先生とミィーティングまでする機会が12月にありました。以上のような感じで私はコンタクトしましたが、本の中の人に初めてメッセージをするのは緊張するかと思いますが、出願に必須条件というよりもお互いのことを知るぐらいに考えてメールをしてみてください。
さて、日本の修士課程からアメリカの博士課程に出願する際、どのようにコンタクトを取るかの問題です。上記述べたように、授業で読んだ本や自分の研究関心から、どの先生のどの大学・学科で学びたいかを絞ることは日本・アメリカどちらから出願するにしても変わらないと思います。問題は、読者の皆様と修士課程における指導教授の先生との距離感が大事なのではないかと推察します。その先生が留学を積極的に応援しているのか、または反対しているのか、そのどちらでもないであるかです。もし、応援してくれているのであれば、例えばその先生にアメリカの先生で知り合いがいないか、メールを送る際に指導教授の名前を使っていいか、などプラスにある要素が多いです。というのも、いきなり知らない日本の修士の学生からメールが来ても返事がもらえない、或いは注目してもらえない可能性が高いからです。その他の出願項目においても、推薦状を始めとして色々と得られるものが大きいのではないかと思います。
指導教授に反対されていたり、完全に距離感があるような場合は、その先生づてにアメリカの先生にコンタクトも取ることはできないかと思われます。そうなると、私と同じような過程を、相談無しでコンタクトするようなことになってしまうと思います。推薦状の件もあるので、関係ができるだけ崩れないようにして欲しいですが、事前コンタクトについては自分でどうにかするしかありません。そのような人のためにこのブログを書いていると言っても差し支えないのですが、可能であれば身近な先輩などに直接相談してみて欲しいと思います。後は、アメリカなどの学会が日本などで開催していることなどもあるので、参加・発表するなどしてアメリカに先生にお近づきになるのも一つの手かもしれません。
賛成も反対もされていない場合などは、上記二つのパターンを全部やる、ということに尽きるのではないでしょうか?積極的に応援してもらえないまでも、せめて名前を使わせてもらうなどはできると思います。しかし、これでは印象として弱いので、どうにかして学会などでお近づきになれるかを模索するのも必要かと思います。こういう作業は、日頃のコースワークや修士論文関連とは直接関係なく、学振など財政的補助を得ている場合などに限られるかと思いますが、大事かと思います。出願は紙面の作業やテストの数字が主ではありますが、目に見えない繋がりの作業も非常に大事だと思います(このことは博士課程以降においても大事だったと痛感しています)。実際に関連した相談などを行なっているかはわからないのですが、歴史家ワークショップのように海外の学術界との関連で自分をどのように設計するかを討論する機関などもありますので、参考にしてみたらと思います。
長々と述べましたが、アメリカの博士課程に出願する前に如何にして教授へコンタクトをするかを述べてみました。立場や状況によって違うことが想定されますが、大事なことはこうした非公式な作業も出願の暗黙の了解であることを認識した方がいいという点です。そう考えればやる気も出るとは思いますし、参考になったとなれば幸いです。